matsuko diary

映画感想ブログ

映画「僕たちは希望という名の列車に乗った」※ネタバレあり

高校生たちのたった2分の黙祷が、国家を揺るがす大事件に発展する。心揺さぶる感動の実話。f:id:osugi923:20190608211636j:imageあらすじ

1956年、東ドイツの高校に通うテオとクルトは、西ベルリンの映画館でハンガリーの民衆蜂起を伝えるニュース映像を見る。自由を求めるハンガリー市民に共感した2人は純粋な哀悼の心から、クラスメイトに呼びかけて2分間の黙祷をするが、ソ連の影響下に置かれた東ドイツでは社会主義国家への反逆とみなされてしまう。人民教育相から1週間以内に首謀者を明らかにするよう宣告された生徒たちは、仲間を密告してエリートとしての道を歩むのか、信念を貫いて大学進学を諦めるのか、人生を左右する重大な選択を迫られる。

 

感想

★★★★★

胸が苦しい

高校生たちの純粋な気持ちからの行為が、国家を敵に回すことになるとは。

やはり残酷でしかない。戦時はもちろん、戦後の恐ろしさを実感した。

設定は違えど、群青劇の描き方がロビンウィリアムズ主演の「いまを生きる」に似てるなと思いました。あの作品もかなり考えさせられた名作。f:id:osugi923:20190608211916j:image

 

登場人物たちの想いが交差して、泣ける

主な登場人物にテオ、クルト、レナ、パウル、エリック5人の高校生たちがいます。

事が大きくなり、追い詰められていく中で、登場人物たちの葛藤の描写が、実に丁寧で繊細に描かれてるのが印象的。

育ちや家庭環境、そして何よりナチスドイツの傷跡がまだ色濃く残っている時代だからこそ、複雑であり、誰が良いか悪いかの範疇を超えたものがあった。

子ども達の純粋で真っ直ぐな気持ちに反する社会主義国家の闇。その圧力から、今までの見えなかった関係性がより一層対比となって深みが増し、そしてその儚さに涙が溢れた。

テオの人間臭さは最高にかっこよい

テオは、自分の意思を貫きたい気持ちと、家族の期待を応えたい気持ちが交差する。結果、ガールフレンドのレナがテオから離れていってしまうのは悲しかったな。テオは意思を曲げたのではなく、家族を守った。でも友達も裏切らない。家族想いで友達想いのテオは最高にカッコいいやつ。f:id:osugi923:20190608211652j:image

 

エリックは一番可哀想である

エリックの父親のくだりは衝撃的(写真が特に)で、1番胸を締め付けられた。悲しい。エリックの自尊心を支えていたものが一気に崩れた時、何を支えに生きていけばいいのかわからなくなる気持ち。只々つらい、涙が出た。

しかも散々、利用された挙句に最終的にエリックを陰謀者に仕立て上げようとした教育相も怖すぎる。不器用な人間が損をする構図をまじまじと見せつけられ、これが世の中の闇だと思いました。一番可哀想なのはエリックである。f:id:osugi923:20190608211703j:image

 

クルトは箱入り息子だと思う

クルトは結局父親に守られてたな、と思いました。正義感は強いし、自己犠牲を伴わない性格だろうけど、やはり本人の気づかないところで父親の存在が彼の意思を守る事ができた。(そういうのも本人は嫌そうたけど)そう思うと、家族を守りたいと想いから、自分の意思を曲げたテオの方が共感できた。(しかし年頃の女の子はその魅力がわからずクルトに行ってしまう)f:id:osugi923:20190608211715j:image

 

人として正しいこととはなにか

人として間違った行動をしたくはない。

そう思っていても、追い詰められると見失いそうになる事がある。

ラスト、そんな極限状態な中、彼らが出した決断には勇気と感動をもらった。

 

これは色んな人に勧めては、感想を聞きたい映画。

ベルリンの壁を取り巻く歴史の背景を、この映画をきっかけに知ることができたのもまた一つ学びになりました。