映画「アムステルダム」感想※ネタバレあり
歴史を変えた陰謀の裏側——ありえないけど、ほぼ実話。
あらすじ
1930年代のニューヨーク。かつて第1次世界大戦の戦地で知り合い、終戦後にオランダのアムステルダムで一緒の時間を過ごし、親友となったバート、ハロルド、ヴァレリー。3人は「何があってもお互いを守り合う」と誓い合い、固い友情で結ばれていた。ある時、バートとハロルドがひょんなことから殺人事件に巻き込まれ、容疑者にされてしまう。濡れ衣を着せられた彼らは、疑いを晴らすためにある作戦を思いつくが、次第に自分たちが世界に渦巻く巨大な陰謀の中心にいることに気づく。
感想
★★★☆☆
世界観、キャスト陣にワクワクしっぱなし
本作の舞台は1930年代のニューヨーク。その時代の街並みや雰囲気、服装全てが好みでした。街並み、アンティーク調のお店のロゴや看板、観てるだけでも楽しいです。(ミッドナイト・イン・パリ状態)
服装に関しては、登場人物のスーツ率が高く、スマートな英国紳士っぽさを感じました。実際もこんな感じだったのかな?
キャスト陣に関しては、主演のクリスチャンベールの役作りは見事だし、憑依が凄過ぎて、それだけでも満足度が高い。
そして、バディを務めるジョン・デヴィッド・ワシントン、ヒロインがマーゴット・ロビーってどんだけ豪華やねん!
特にマーゴット・ロビーは美しかった。今まで見た作品は、美の暴力強め・キュートなイメージでしたが、本作ではキーラ・ナイトレイのような知的さのある雰囲気(役柄は大胆かつ個性的だけど)で、それもまた素敵でした。惚れ惚れ。
さらっと登場するテイラー・スウィフトやラミ・マレック、そしてロバート・デ・ニーロなど、豪華キャスト陣…。純粋にわくわくしました。
序盤の衝撃で、一気に引き込まれた
壮大なネタバレ投下になりますが、
序盤、テイラー・スウィフト演じるリズが、陰謀の口封じのために殺されてしまいます。
何者かに押され、車に轢かれてしまうそのシーン、車の下敷きになるところを鮮明に描いているため、ショッキングなシーンとなっています。戦争映画やホラー映画でもない限り、急にドキリとくることはあまりないので、不意をつかれました。主人公たちと一緒にいながらも一瞬で殺されてしまう、その衝撃といったら、なんともリアルでした。
その見事な「起」によって、「承転結」まで多少の中弛みがあっても、緊張感が保たれていたと思います。
「愛は必要とするものではなく選択するもの」
作中で愛の形について問うシーンがありますが、印象に残っているセリフの1つです。
主人公のバートには奥さんがいますが、側から見ると破綻しています。
バートは、恋人同士であるハロルドとヴァレリーと共にするなかで、時には寂しさを抱き、時には自分達の愛の形に疑問を抱き、最終的にはお別れをします。
愛情という言葉の裏には、寂しさを埋めたいがため、権力・地位欲しさのため、純粋に愛する気持ち以外の「必要」な何かがあった。「愛は必要とするものではなく選択するもの」という言葉には、愛する人は、自ら「選択」することで、本物であることを説いたセリフのように感じました。
「正しい神とは?」
これも主人公バートのセリフだったと思いますが、
まず、間違った神=親ナチスのことでしょう。
当時のアメリカの歴史を変えたかもしれない陰謀とは、裏でおこなわれようとしていた、実業家などの権力者が絡んだアメリカ政権のクーデター、そしてファシズムの形成です。
そして揺さぶりをかけられそうになったのは、アメリカ史上もっとも勲章を受けた軍人であるギル(ロバート。デニーロ)で、国民からの信頼が大きい彼を指導者にして、アメリカでもファシズムを起こそうとしていたわけです。
一見、ハラハラ・ドキドキな展開を予想してしまいますが、主人公が自分達の無実の罪を晴らす=陰謀を阻止することに真っ直ぐ向かっていくストーリー展開だったので、裏切りや間違った神を選びそうになることもありません。そこはカタルシスに至らず、惜しいと思ってしまったところではあります。実話ならホッとするところでしょう。
そして、作中に気になるセリフがいくつか散りばめられていても、それを回収する描写等があったのかは謎、笑
正直、もう一歩…!といったところでしたが、俳優陣の演技は最高なので、「こんな贅沢をありがとうございます。ご馳走様でした!」という気分で終われます。