「家へ帰ろう」感想※ネタバレあり
待っていたのは、70年越しの奇跡でした
あらすじ
アルゼンチンに住む男性が、ポーランドの親友に会いに行く様子を描いたロードムービー。旅の途中で出会う人々に助けられながら目的地を目指す主人公の姿が映し出される。
アルゼンチンのブエノスアイレスに暮らす88歳の仕立屋、アブラハムは、70年以上会っていないポーランドの親友に、最後に仕立てたスーツを渡そうと思い立つ。その親友は、ユダヤ人のアブラハムがホロコーストから逃れた際に助けてくれた命の恩人だった。アブラハムは、マドリード、パリを経由して目的地に向かうが、道中さまざまな困難が襲う。
感想
★★★★★
「家へ帰ろう」て言葉の本当の意味を知ったときの感動。ラストで2人が再開した時のシーンが忘れられません。あの瞬間、涙が溢れました。
「家に帰ろう」の本当の意味
アルゼンチンに暮らす88歳の仕立て屋、アブラハム。彼は明日から老人施設に入居することになっており、現在の家は売られて、そのお金は娘たちで山分けするという、なんとも可哀想な展開。
というのはミスリードであり、実は、彼はユダヤ人でありホロコーストを生き抜いた。その時に自分を匿ってくれた友人との約束を果たすため、時を経て、アルゼンチンから故郷ポーランドに行くという話。なので題名である「家に帰ろう」はいまいるアルゼンチンの家ではもちろんなく、自分の故郷であるポーランドの家に帰るという意味でした。
ホロコーストを生き抜いた老人の話
アブラハムは戦争によってさまざまな後遺症を抱えている。
足が不自由
腕に刻まれている番号
ポーランドという言葉を発しない
ドイツを嫌い、ドイツに脚を踏み入れたくない
残酷な記憶
作品を観てるだけでもいくつか上がるが、想像を絶する体験を聞いた話ではなく実際に見たというアブラハムの台詞がずしんと胸を打つ。
旅路で人との出会いもあり、楽そうに話は進みますが、時に彼の戦争での後遺症が随時に見えてくる。ポーランドという言葉を言いたくない彼は、空港で職質された時にこの人はユダヤ人であり当時を生き抜いた人であることがわかる。そして、ドイツに足を踏み入れざる負えなくなった辺りから物語の本質が見えてくる。
回想シーン、そしてドイツ人の女性に家族の話をしたときがもう…
冒頭、幼少期のシーンでは、家族との幸せそうな描写があり、余計にこの後の戦争での残酷さと対比されていて胸が痛くなる。
アブラハムの娘とのシーン
昔、アブラハムが娘達に「私のことを愛しているか」聞いた時、唯一頑なに愛してると言わず喧嘩別れをして疎遠になっていた娘がいました。アブラハムが旅路の途中でお金を盗まれたことがきっかけで、たまたま近くに住んでいたその娘に助けを求めて会うことになるのです。その時に父親がホロコースト時代に腕に刻まれた番号を娘が自らタトゥーとして入れているのがわかるシーンがあって。お父さんと同じ番号を入れてるんだとわかった瞬間に、誰よりも本当は父親を愛していて、他の姉妹たちが簡単に「愛してる」とアブラハムに伝え、行動と伴っていないシーンと比較すると、行動で示す彼女の愛を間接的に知るという演出は素晴らしいなと思います。
ハッピーエンディングでこの作品が大好きになりました
そして匿ってくれた友人に70年ぶりに会えた時、その瞬間のシーンがこの映画の全てだと思います。
見れてよかった。いまの幸せを噛みしめていこう