matsuko diary

映画感想ブログ

「イニシェリン島の精霊」感想※ネタバレあり

すべてがうまく行っていた、昨日までポスター画像あらすじ

1923年、アイルランドの小さな孤島イニシェリン島。住民全員が顔見知りのこの島で暮らすパードリックは、長年の友人コルムから絶縁を言い渡されてしまう。理由もわからないまま、妹や風変わりな隣人の力を借りて事態を解決しようとするが、コルムは頑なに彼を拒絶。ついには、これ以上関わろうとするなら自分の指を切り落とすと宣言する。

感想

★★★☆☆

スリー・ビルボード」が好きで、その監督作品とのことで気になっていた本作。

ジャンルはコメディ/ドラマ、しかし予告を見る限りなんだか暗い、とある雑誌のコラムにはホラー要素があるとのこと。どんな作品かよくわからず、自身の目で確かめることに・・・・・。

私はホラー認定させていただきました(もしくは漆黒コメディ)

これは人間関係のもつれが生んだ、愛と憎しみの物語である画像1常に不穏な空気。いつ何が起こるかわからないハラハラ感。そして後半は畳み掛けるような狂気展開。

愛が憎しみに変わる瞬間、その過程が描かれるなあ。

一緒に鑑賞した方々に救われる私画像7

ストーリー的にはどんよりしてもおかしくない展開が続くけれど、確かにすくっと笑えるシーンもあった。不憫すぎて、この凄まじい空気に耐えきれなくて、でも掛け合いや言葉選びからか、可笑しくなってしまうところがある。ただ一人で鑑賞していたらそんなことはなかったかもしれない。

映画館で鑑賞したので、他の人が笑ってたりするもんだから、そこで救われました。

(ああ、これ笑っていいところね)

ブラックジョークに反応できるムッシュやマダム達、映画好きに感服。

あと、この絶妙な空気感を作り出せる監督、俳優陣がとにかく素晴らしい。

これは破局から始まる物語画像2

作品を自分なりにまとめたところ、突然別れを告げる彼と突然別れを告げられた彼女。

彼女認定したパードリックがひたすら惨めに見えてしまうけど、やはり不憫。

コリンファレル演じるパードリックのハの字眉毛がなんとも印象的。

突然別れを告げた方(コルム)も我慢していたんだろう。いままでそれを言わなかったことが、彼なりの優しさや責任感の強さだったのだろうか。(劇中での彼のふと垣間見れる行動や言動から察する。)そしてコルムの気持ちに気づかず、突然別れを告げられるところまで気づかず来てしまったのだろう。

気づかないパードリックと、自分の思いを伏せていたコルム。見方によってはお互いの良さでもあったはずなので、どっちが悪いとかでもないですね。コルム自身も、パードリックが悪いことをしたわけではないと冒頭で伝えている。お互いがうまく行かなくなっただけなんでしょうけど。

まぁこんな別れ方は「はいそうですか」とすぐに納得できないのはわかる。なんかちょっとしたトラウマになりそう。コルムは特に人からモテるような人みたいですし。そんな人が理由も言わずに離れていったら、自分の性格に欠陥があったんじゃないかって思っていまいそう。

これ、どっち派とか分かれるんですかね。だれかと話したいけど、周りで見ている人がいないのと、人に勧めるかと言ったら躊躇いそう。

厄介なコルムと、どんどんおかしくなるパードリック画像4

パードリックと関わらないことを突然し出したコルムですが、この小さな町から出ることもなく、同じ行きつけのバーがあったり、道ですれ違ったり。2人は同じ集落で暮らし続けてるからなんとも気まずい。やっぱり気になるし、美味しく飯もありつけない。

コルムのよくないと思うところは、さんざん突き放しといていざ助けてあげたり、ずっと無視したらいいのになんだかんだ会話をしてくれたり。根は優しいんだろうけど、相手のためにはならないでしょう。

その結果、ダークサイドのパードリックを生み出してしまったわけですよ。

好きだけど憎いという感情をコリン・ファレルは見事(ユーモア)に演じていて、めちゃめちゃ好きになりました。

好きの反対は。画像9

改めて「好き」の反対は「嫌い」でなく、「興味がない」ということを思い知るような作品でした。

本土で起こっていた内戦を皮肉った描写がありますが、この小さな町で起こった2人の戦争に一番迷惑を被ってるのは、やはりそこに住む住民であることは間違いない。